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砂漠

 

『Wether Report』の中には、同じフレーズを使っているが歌詞が全く違う、対のような曲が2つある。

『砂漠』と『大砂漠』

『投擲』と『脱皮後』

 

砂漠、アラビア。

サハラ砂漠

砂以外になにも存在のない、寂しい場所を風が吹き抜ける。

『気球』から風景を一瞬で変える方法。

ゆったりした中東風のサウンドの中、テンポのいいドラムが人をリズムに乗せさせる。

体が動く。

 

<終わりは悲しい>

<終わりは悲しい>

<誰も知れない>

<誰も知れない>

印象的なリフレインはどこか寂しい。

(このメロディーは『大砂漠』で再登場する。)

 

<結わえ 結わえ 電極を地表に>

<毒 孕んだ花が咲いたのさ>

<遥か古代のテレビドラマ>

終末世界の風景だろうか。

歌詞を見るまでは「弱い 弱い 電極」「遠く 孕んだ花が咲いたのさ」だと思っていた。

 

<種子纏って 砂漠は広がる>

人類がいなくなった後でも、砂漠(自然)はおかまいなしにあるがままに広がっていく。

そんな超然とした視点を感じる。

 

歌詞が人を寄せ付けないのはいつもの事だが、ミドルテンポなのに妙にノリが良い音だと感じて、歌詞の意味を考えずとも体は動く。

風景描写はギター、聴かせる力はドラムとベースが担っている印象。

基本的にはフレーズは一緒で繰り返し繰り返しの曲だと思うんだけど、ずっと聴いていて飽きないというか。

ドラムのテンポが完璧だからか、3楽器のアンサンブルがビシッと決まっているからか、ダウナーな歌声が何かしでかすんじゃないかっていう緊張感を保たせているせいか。

全く同じ繰り返しじゃなくて、所々ドラムやギター(自分の耳では確認できないのだがベースも)が小さなアレンジを加えているんじゃないだろうか。

 

『Wether Report』の中では目立つタイプの曲ではないと思うけど、感想を書くために繰り返し繰り返し聴いていても一向に飽きなかった。発見。

耳を澄ませるたびに多分、ただのリフレインじゃなくてシンバルの音が増えてる、とかギターの音が増えてる、とか気づいた。

『Ave Materia』で彼らの音楽を山とか海に喩えた事もあったが、"砂漠"も良い表現だ。

何も無くて、ただ風が吹き抜ける。

でも何も無く見えるのは表面上だけの事で、砂の下には生態系があるし岩の影には虫が息づいている。分かる人には分かる。

良いタイトルだと思う。『砂漠』。