あの頃、誰も知らなかったやん。
SAKEROCK言うたらサカナクションじゃなくて?って聞き返されるやん。
だのにいつの間にかお茶の間の歌手、国民的シンガーになってしまった星野源。
あの頃の君はどこへ行ってしまったんだい。
POP VIRUS 感想です。
1:POP VIRUS
そんな簡単に「ポップ」なんて言うなよ!
サブカルの味方じゃなかったのかよ!
ていうかこの後半、なんて読むんだよ!
分からないよ!
調べたらウイルスでした。
ここで少しの違和感。
ポップという明るい言葉と、ウイルスというネガティブな言葉。
相反する意味に属する言葉が繋がっている、胸のざわめき。
「口から歌が出る病気」
「心臓から花が咲くように」
歌と病気、心臓と花。
歌詞も陽と陰の言葉が組み合わされている。
ポップスって、陽、陽、陽陽陽陽~~~!って感じじゃないのか?
もしかしたら星野源はまだ、こちら側なのかもしれない。
安心してトラックを進められる。
2:恋
すまんなそりゃ嘘だった。
2曲目に大ヒット曲を入れて来るのってレコード会社の作戦だって知ってるんだからね!
言わずもがなの恋。
贔屓も入っていると思うけど、不思議と聴き飽きない。
何度聴いても、やっぱり良い曲だと思う。
楽しいし。
3:Get a Feel
「何か言って」に聴こえてて、「隣にいる人には伝わらないんだな、切ないなあ」と思ってました。
居ました。
4:肌
ハイハイCM曲ね!!
なんだかんだ好き。
ポワッ ポワワ~~みたいな感じ、ゆるくて良い。
5:Pair Dancer
歌詞を見るとラブソングだけど、一筋縄ではいかない印象がある。
何か裏がありそうな。
だけど「間違う隙間に愛は流れてる」という歌詞はどう考えても素敵。
今は分からない感情だけど、いつか大事な人ができたら分かるんだろうか。
6:Present
サビすごい好き。
雨上がりの、だだっ広い場所で空を見上げているような晴れやかさ。
複数人で歌う歌、好き。
ライナーノーツを見ると結構重めなテーマだったけど、あんまそうは感じなかった。
これから何か始まるようなワクワクを感じた。
また、何年か後に聴いたら分かるのかもしれないけど。
7:Dead Leaf
永年思春期みたいな精神年齢の自分は、ちょっとまだ愛について直接的に言われると照れてしまいます。
「一番近くて古い言葉」という表現はとても素敵だと思う。
「愛」という言葉を、言葉を使わず表現しようとするのが芸術だと思ってるんですけど、それを探し続けてきた人が、結局昔から使われているこの言葉、良いんだよね。って言っているみたいで、肩の力が抜ける。
自分はまだ探してます。
8:KIDS
「サピエンス」と2トップで好き。
「いつも子供のままどこか甘えたまま」
「大人のふりをした」
の歌詞が切ない。めっちゃ分かる。
まだまだ子供なのに、時間は勝手に進んでいっちゃったんだよなあ。
音楽も色々遊んでる感じがして、好き。
切なさと子供っぽさと遊び感がとても良いと思います。
9:Continues
「命は続く」
「命は伝う」
「星に響いた音は」
「次の誰かを照らすんだ」
POP VIRUSを象徴する曲はこれだと思う。
サビで合唱するのが、凄いグッと来る。
「繋いでいる」感じがする。
一度死んだ人だから、説得力があるし、重みがある。
私達は繋いでいかないといけない。
・・・・・・・何を?
ふっと思った事に、微かな違和感。
音楽?
いや、だけど音楽できないし。
何を繋いでいくっていうんだよ。
10:サピエンス
「ああ 僕らはいつまでも間違ったまま世界を変えて走り出す」
「ふざけたかなしみを味わったまま、やめない意味はいつの日も 寂しさだ」
切ない前奏だったくせにサビで疾走感に変わるのずるくない?
好きだ!!
ふざけたかなしみって何だろうね。
評価されない事とか虐げられている事とかな。
だけどそれをやめたら寂しくなっちゃうから続けているのか。
切なくていじましい、かなしいかな、それが人間ってやつか。
「あなたはいつの日も間違えたまま、泥水蹴って走り出す」
「ふざけたいとしさを抱えたまま」
「転んだ後に目が合って笑う」
だけど彼は1人じゃなかった。
一緒に間違ったまま走る仲間がいた。
一緒に間違えて、一緒に失敗して、そしたら笑い合えた。
なんて素敵でたくましくて、晴れやかな、人間らしいってこういうことか。
11:アイデア
この流れでアイデアはずるいよ!!
朝ドラの主人公は障害を持っているんだけど、あんまりそういうのにこだわってなくて、人生における障害を、水たまりを飛び越えるようにひょいひょいっと越えていく。(個人的な感想です)
星野源もそういう感じで人生を考えているんじゃないかと。
「にこやかに中指を」突き立てて不遜に生きていこうじゃないかと。
初めてPV見た時、白い壁を持ったダンサーのシーンを「葬式会場みたいだな」と思った。
あながち間違いじゃないとずっと思ってる。
2番で一回死ぬよね?
12:Family Song
何かのインタビューで、「お母さんがいて、お父さんがいて、同じ家に住んで、そういうのが当たり前ではない家族もたくさんいる。色々なかたちの家族がいるという事を歌いたかった」と言っていた。
そうだよね。
一番大事なのは、幸せでいることで、そこに家族の人数とかかたちとかって関係ないよね。
13:Nothing
これもラブソング。
「君を誇る事で私は生きている」というフレーズが好き。
誇るという感情は、とても尊いと思う。
誰かを誇るという事は、その分、その人に対して何かを費やして来た結果なのだと思う。
そこには継承とか、繋いだ重みがある。
14:Hello Song
イントロが地獄でなぜ悪いっぽい。
終始楽しげで良いよね。
過去に「その時までバイバイ」と歌った星野源が、今は「いつかあなたに出会う未来」「笑顔で会いましょう」と歌う。なぜこっちの方が悲しく感じるんだろう。
なんか、とんでもなく遠い未来で会う時のことを歌っているような感じがするからかな。ライナーノーツを読むとなんとなく納得する。
星野源は遠くへ行ってしまった。
武道館も越えて、テレビも越えて、遥か未来へ行ってしまった。
未来から持ち帰ったPOP VIRUSを、テレビを通して、ライブを通して、CDを通して、感染させようとしている。
多分、ずっと昔から彼は持っていたんだ。このウイルスを。
だって昔から、「なんか良かった」もんね。
POP VIRUSと名付けた「それ」をより多くの人間に感染させるためには、見晴らしの良い高台に行かなくてはならない。それだけの事なんだ。
だけどちょっと待って。
ウイルスって聞いて、良い顔をする人ってあんまいなくね?
ネガティブな意味を持つ言葉を、マジョリティの真ん中に持ち込むのはあまり正攻法ではない。
だけどそれをやってしまう。
星野源はこちら側から出て行ってしまったと思っていた。
違うかもしれない。
星野源、君は持つ武器を少し間違えているのかもしれないぞ。
Tr.1と一緒で、ポップなくせに少しの不安を孕んでいる音楽の塊は、自分は間違っていないとずんずん進んでいる。マジョリティの真ん中を目指して。
おいおい、ちょっと待てや、心配だ、そんなんで「あちら側」にボコボコにされやしないかい。Mステで「女の子の首の裏からパンの匂いがする」って言ったらさすがのタモリもノーコメントだったじゃないか。まだ心配だぞ星野源。
君の旅路には誰かがついていないといけない、誰かって誰だ。
我々しかいないじゃないか。
星野源は遠くに行ってしまう。
そんなら、それに付いていこう。
だって、彼の武器は細菌兵器だぜ。
感染する人間がいないと、意味がないじゃないか。
まだ感染してない人、います?
握手しよう。
接触媒介で、ウイルスは繋がれていくから。