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起爆

 

<きみは戦争に興味がないしね>

<戦争はきみに興味がない>

<しね>

 

繰り返されるたった3行の言葉と、破壊的に打ち鳴らされる轟音。

『皿(ハッピーファミリー)』では抑えていただけだ、ハードコアみたいな音の出し方も彼らの一面。

 

温度差で風邪引くわ~。

 

感情に任せて引き殴っているようなサウンドも、不意にドラムのカウントを伺って停止する空白も、彼らの息抜きに感じる。

美しいメロディと、破壊的なサウンドと、その暴力を飼い慣らして"演奏"へと変える技量。

綺麗で万人受けする"音楽"だけを差し出さない、むき出しの感性を信じてる。

 

 

最後の<しね>がポイント。

これをどう訳するかでこの曲の受け止め方が変わる。

心理テストみたいですね。

自分はもちろん「死ね」!

 

パターンは3つ。

「戦争はきみに興味がないしね~」という日常会話パターン。(日常か?)

「戦争はきみに興味がない(ので)死ね」と"戦争"に殺されるパターン。

「戦争はきみに興味がない(が、きみが戦争に興味を持つ事は出来るのにどうしてそれをしないんだ?僕はそれが許せない。ので)死ね」と"きみ"に対峙する者からの怒り。八つ当たりと言っても良い。

自分は3つめ!

 

「きみは戦争に興味が無く、戦争はきみに興味が無い。」ならwin-winで良いじゃないか。お互い干渉せずやっていこうぜ。

お互い干渉しなければ、それに越した事は無い。

 

何度か記述しているが、自分は戦争の本をよく読む。

別に主義主張を持っている訳じゃない。

議論を望んでいる訳じゃないから、誰かにこの事を話した事も無い。

ただひっそりと、一人で静かに読むだけ。

「誰かに話すべきじゃない」「話しても困るだけ」「変なやつと思われたら嫌だ」

悲しい歴史と、色んな気持ちがグチャグチャになって、一人で抱えきれなくなって、学生時代はよくパンクした。

だから思った事がないわけじゃない。「なんでみんな読まないんだ、知らないんだ、知ろうとしないんだ?」

抱えたまま生きてきた自分を偉いと思う。

だから『一度だけ』も『起爆』も好きだ。

 

「言葉にできない感情を、文章で表現した物を文学と呼ぶ」

 

"戦争"というものに限って言えば、言葉にできない感情を、表に出さないようにしてきた疑問を、まとめてグチャグチャにボコボコに発散してくれるのが『起爆』という曲だった。

それでもやっぱり、知ろうとしない事は悪だと思う。

何が真実で何が創作なのか答えは無いけれど、それでも、自分たちは色々な歴史から"遠ざけられている"と感じる。

手を伸ばせば届くのに。

手を伸ばし続けなければ、歴史と現在は分断されて、気づいた時には"歴史"と呼ばれていた物は跡形もなく消えていて、その粒子は未来に置き換わる。そんな気がする。

だから自分はこれからも手を伸ばし続けるだろう。

だけどこれからも表に出さず抱えていくだけだろう。

 

『起爆』で好きな所がもう一つあって、歌声(ささやき、と言ってもいいが)のボリュームが小さくて、演奏の方が大きい所。

主義主張に聴こえないように、あくまで音楽として聴けるようにという慎みを感じる。(考えすぎ?)

それぐらいが丁度いいと思う。

気づく人だけが気づく棘を、色んな所に散りばめて。