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鉱山

 

何だこの楽器は・・・

聴き覚えがあるような、でも楽器名は分からなくて。

東南アジア風の、とかアフリカ民族楽器のような、とかきちんと定義出来ればよかった。

それほど耳聡くは無く、知識すらも無く、ただ感覚のみで「不思議だなあ」とか「癒されるなあ」としか書けない貧相な駄文をご容赦ください。

 

音が難しいように、歌詞も難しい。

<聖なるビルのふもと>

<電磁波の降るなかを>

People In The Box(または、波多野裕文)の歌詞世界で度々登場するモチーフ、都市の神聖化と否定。

ハレルヤと祝福された『塔(エンパイアステートメント)』を思い出す。

『大陸』の向こう側に置いて来たと思ったあの『塔』は、もしかしたらとても大事な物だったのかもしれない。

『脱皮後』に歩き出した新世界でも聖なる『塔』のふもとに立ち続けている。

『船』で「放送はこれでおしまい」と別れを告げたが、電磁波はまだ降っている。

電波はまだ届いている。

結局逃れられないという諦めか。

それとも脱出したと勘違いしただけで、『大陸』は地続きだったのか。

 

<螺旋の樹に登る21人の子供>

21人の子供とは、『Wether Report』収録の21曲の事だろうか?

安易な気もするが、だからといって歌詞の理解に役立つわけでもない。

ただ、この"螺旋"が何を意味するのかは考察しがいがある。

(2023年5月10日最新アルバム『Camera Obscura』発売おめでとうございます。MV曲『螺旋をほどく話』にもあるように、People In The Boxにとって"螺旋"には意味があると深読みしたい。)

 

<ぼくは歩いて帰ろう>

<見上げた空は虹色>

行き先不明の旅路の終着点は帰るべき処だった。

エキゾチックな音に乗る<帰ろう>のコーラスは、自分には「辿り着けなかった」という悲しみや諦めのように聴こえる。

虹色というポジティブなイメージのある言葉ですら、冷笑めいた絶望を感じる。

空が虹色だとして、それを美しいと感じるかは見る者の心次第。

 

20曲目、『鉱山』。

険しい山を登って行くような曲だ。

酸素は薄く、妙な息苦しさがある。

それでも音楽は美しく、邦ロックのジャンルに囚われない音作りが格好いい。

楽器のクレジットが無いか、『Wether Report』の歌詞カードを開いてみた。

縦長の紙には4枚の写真がプリントされている。

すべて光が美しい。光を撮影するためにそれ以外が存在しているようだ。

ジャケット候補だったのかな。

自分は花の写ったものが好きです。

結局、楽器のクレジットは無かった。

ただ、"music"―People In The Box(exept 鉱山 edit Uni Inoue)らしい。

―鉱山のみ井上うにさんが編集しています。

井上さんが編集・加工してあの音を入れたのか?

井上さんが演奏しているのでクレジット表記しているのか?

答えは無いが、クレジットを眺めているとたくさんの人が携わっているんだなぁと改めて思う。

『鉱山』を登っているのは、演者の3人だけではない。

制作に携わった人々、それに"and share sympathies with them"した我々。

 

"共感を分ちあってくれたあなた方"というクレジット表記が大好きだ。

このバンドを好きになった理由のひとつでもある。

全ての人々が『鉱山』を登り切った先が――ジャケットの景色であったなら、この写真に必然性がある。

 

残り1曲。

山の向こうに広がる景色を、耳で観に行こう。

 

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