【00:00】
囁くようなはじまりは、夜の幕開け。
澄み切った夜空の下、駆け出していくようなメロディだ。
<大変だ 靴が脱げてきみは消えた>
【00:08】
<目を開ければそこには何もない
楽しいことも悲しいことも二度とは思い出せない>
疾走する音楽に乗るのは、ペシミズム(悲観主義)を伴うドライな歌詞。
音楽と歌詞の温度差が激しいのは、いつものこと。
通常運転の彼らの作品が、耳に心地よい。
ノリの良い、重めなドラムのビートと、そこを軽々と渡り歩くギターの音色。
【00:27】
主張するベースが格好いい。
【00:57】
ノータイムでサビに突入。
楽器と歌声がどぼん、とひとつの音楽のプールに飛び込んでいくみたい。
<箱のなかには見かけは何もない
それが僕らの解決策さ 不幸の種を刈り取る>
箱が何を意味するのかはあずかり知らぬ所だが、敢えてライブハウスと解釈したい。
演者と観客が入るまでは空っぽの箱のなか。
それを"解決策"と語ってくれるのは、嬉しい。
箱がいっぱいになった時、そこにあるのは幸福だから。
【01:12】
どうしてメロディが切なく聴こえるんだろう。
【01:31】
<箱のなかには見かけは何もない
それが僕らのはじまりだった 意識は覚醒しっぱなし>
それを"はじまりだった"と語ってくれるのは、エモい。
観客(こちら側)は、いつだって箱の中で覚醒しっぱなしだよ。
People In The Boxも、そうだったら嬉しいな。
【01:48】
サビを超えて、小休止する緩やかなメロディ。
間に挟まるキメが、格好良さを際立たせる。
【02:16】
<ユリイカ 光を
ユリイカ 光を
眩し過ぎてさ暗闇のようだ>
サビ入り、揃った楽器の気持ち良さ、メロディの格好良さと音楽の魅力は十分なのだが、「ここでユリイカかーー!!」と、タイトルが言葉で聴こえてくるとこちらのテンションは爆上がり。
エウレカ、ヘウレーカ、ユーレカ と、発音には諸説ある。
音楽は、光を発見した。
"眩し過ぎて暗闇のようだ"と、捻くれたような皮肉のような、穿った物言いが彼ららしくてとても良い。
【02:31】
ここから更に曲調のテンションは上がっていく。凄い。
早まるBPM、高まる演奏。
<うたを歌おう
走る救急車のなか
きみの持ち時間は
あと8小節>
救急車に乗せられて歌ってる場合じゃない。
でも歌っちゃうのが、People世界のゆる面白くてヤバい所。現実について語っているわけではないから。
持ち時間、とは、救急車に乗せられた人物の命の残り時間とも取れる。
『ユリイカ』も8小節で終わる。
あまりにクールで初めて聴いた時衝撃が抜けなかった。
楽譜を実際に見た事はないけど、おそらく、本当に8小節で終わってるんだろうな。
前半歌詞に飲酒の描写があるので、酩酊の曲とも取れる。
だとしたら世界一オシャレな酩酊ソング。
【02:47】
<Harry up to the hospital>
後奏で繰り返されるコーラス。
急ぐ救急車のように、メロディも躍進する。
急性アルコール中毒で運ばれていく人物を想像する。ちょっと面白い。
それでも俗世っぽさを感じないのは、音楽のクールさと歌声の純粋性による物だろう。
もしクリープハイプだったら音楽はもっとウェットになるだろうしPVは最後、救急車の中の女性看護師とイイ感じになる。(偏見)
だからこそ、いち解釈に留められない<Harry up to the hospital>(病院へ急げ)というフレーズが面白い。
音楽に酔った人々へ送る<Harry up to the hospital>かもしれないし、この世がおとぎ話に見えている頭お花畑の人々へ送る<Harry up to the hospital>かもしれない。
いずれにせよ、後奏のテンションは最高で、ライブで聴くと余韻がものすごい。
ああ、ライブで聴きたいな。