ライブだと、福井さんがベースを持ち上げる。短く爪弾く。
だいたい最後の方にやるから、終わりの曲という印象がある。
鳥の声の中、「今日はどうもありがとう」と短いMCが入る。
「オーケストラ、騒げ 今日は
きみのバースデイ」
誕生日を祝う歌。オーケストラもやって来て、盛大だ。
かなぐり捨てるように歌われる「バイオリン、コントラバス、
生まれた事を祝うというよりも、「独立記念日」
独立。
1人で生きていく事を決めた。
十分、祝福に値する出来事だけど曲に漂う不穏さが拭えない。
外では妄信者が怒り、トランペットからは血が流れ出している。
中にいる主人公は何か、悪い事をしてしまったんだろうか。
独立は悪い事だったんだろうか。
でも、もうしてしまった独立は覆せない。
だから盛大に祝われる。ただ、祝われる。
バイオリンもコントラバスもチェロもティンパニもホルンもトラン
ドラムが扉を強く強くノックしたら、「1、2、3、4、5、6、7」
あとはもう、熱い音楽が暴れ回るだけだ。
身を任せてステップを踏んでしまって。
森から出る事を拒むように、
曲が止まってからやっと、息を止めて聴いていた事を知る。
体が熱いのは、
再び呼吸をすれば、生きるが始まる。
吸い込む空気の静謐さが、生まれ変わった事を教えてくれる。