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真夜中

 

最高。

 

夜闇から立ち昇るようなギターの音色。

空気は一瞬で真夜中に変わる。

 

『真夜中』のギターは福井氏の作曲・・・と確実に何かのインタビューで読んだはずなのだが、見つけられず。すみません。

(紙媒体だったかもしれない・・・当時のROCKIN'ON JAPAN、実家にあり確認できず。無念。)

近しいインタビューはあったのでせめて貼っておきます。

www.cinra.net

 

元来、夜の似合う(と勝手にカテゴライズしている)歌声だと思う。

どうしようもなくやるせない夜のダウナー感と、何もかも滅茶苦茶にしたい夜のエネルギッシュさ。

そんな夜にお似合いの、ギター、ドラム、ベース、歌。

 

<今日の放送は終了したとそっけない画面のテロップ>

まどろむように緩く、ミドルテンポの演奏で始まる。

<遠くのクラクション サイレンの音>

<彼女の夜はやかましい>

これまでの曲と飛びぬけて歌詞の描写が良いと思う。

誰もが、真夜中の情景を思い浮かべられるから。

そして、(おそらく)眠れない"彼女"の夜を、やかましいと表現するセンスが良い。

上から目線の物言いみたいで嫌なのだが、でもあえて言葉にするならやっぱり"センスが良い"。

言葉にしなくていいなら、ただ耳を澄ます。

浸る。

 

<鳴りやまない囁きに 眠れそうにないなら>

ドラムの合図でテンポが変わりサビに入る。

盛り上げ方がシンプルで親切設計。好感。

<一晩じゅう一緒に起きていても>

<いいよ>

眠れない彼女のために。

優しい歌詞だと思う。

"彼女"につい共感する。

眠れない我々にも、音楽が一晩じゅう一緒に起きて寄り添ってくれる。

そう思いたい夜。

ドラムが再び合図を送るが、ギターと「いいよ」のリフレインのみ。

ここの音の引き算も素晴らしい。

ドラムで盛り上げた分期待が高まるが、逆に2音(ギターと歌)に集中する事となる。

ギターのメロディがやっぱり良いから、最大限"聴かせて"くる効果。

あとは単純に、「いいよ」という無条件の肯定が聴いていて気持ちいい。

 

<深夜のタクシー 気怠く流れる>

<国道 死神 鎌を振る>

<ヘルツ博士のよどんだ眼に>

<真夜中のトロフィー>

呪文のように散らばる単語。

"彼女"の乗っている(あるいは想像の)深夜のタクシー内で流れるラジオから断片的に聞こえる言葉だろうか。

ラジオ、電波、周波数、ヘルツ、ヘルツ博士。

目を閉じても眠れない、浮かぶのは散漫な単語。

<彼女の夜はやかましい>

<理由を述べよと執拗に>

"彼女"は心理的圧迫を受けていそうだ。

理由を述べよと執拗に迫られるのは、嫌だよね。

 

<鳴りやまない囁きに 追いつめられ壊れそうなら>

<一晩じゅう夜を傷つけても>

<いいよ>

1度目のサビよりもバーブが強く、ボウッとした音が残る。

それが幻想性を高めていて、聴く印象が少し変わる。

バーブ(リバーブレーション)・・残響効果。

何度も聴いてやっと冷静にどんな音が鳴っているか書けた。

「一晩じゅう夜を傷つけてもいいよ」という歌詞はPeople In The Boxの中でも屈指の名歌詞だと思っている。

"言葉に出来ないことを言葉で表現するのが文学"という定義があるが、なんだかまさにそれだと感じる。

(何度も引用しているのに引用元を忘れてしまってます。すみません。)

理屈は越えたところにこの一文はあって、それが数々の夜を救ってくれた。

理屈を越えても違和感が無いのは、良い音楽と、やはり「いいよ」のリフレインだと思う。

良い音楽が鳴ってる中、優しく「いいよ」と繰り返し続けられたら、もう何も考えられなくなりますから。

 

<誰かがギターを弾いている。>

 

タガが外れたように、間奏はエネルギッシュなセッションが行われる。

確か、ここは即興じゃなかったか。

インタビューで読んだ記憶があるのに、これも情報源が見つからなかった。すみません。

その記憶があるからか、どこか危うさや刹那性を感じる演奏に緊張する。

どの楽器の音も格好良くて耳が忙しい。

そう聴き惚れていると、唐突に最後のサビに入る。

ドラムの合図が最後だけ薄い。

だから心の準備が間に合わないのだが、それが逆に意味不明の感動をもたらす。

ノータイムで全ての音の洪水を浴びるからだ。

そこにあるのはこれまで登場したメロディ、効果、音達がオールスターで出迎える。

映画のラストシーンのように、『真夜中』という曲の最後を盛り上げる。走り抜ける。

リフレインを続ける「いいよ」は許可や許しというより、祈りのような必死さを感じる。

"そうであって欲しい"と聴こえる。

 

演奏と歌声は唐突に止み、始まりと同じような静寂の中ギターが鳴り響く。

夜はきっと、もうすぐ明けるのだろう。

一晩じゅう一緒に起きていてくれて、やるせない気持ちをぶつけて受け止めてくれた夜は。もう去ってしまう。

 

だけど"彼女"の眠れない夜は、今日に限った事ではないだろう。

眠れない真夜中は何度だってやってくるから、そんな夜は音楽を聴こう。

『Wether Report』34分19秒。

我々の味方は、そこに居る。

 

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良い絵が描けたと思う。

下書きから構図等は変わらなかったが、窓の外に色の違う星を配置したり、靴下にも星を散りばめてみたり、作業中の思い付きでやった事が、最終形態にピタリと当てはまった気がする。

間奏は即興演奏という記憶も手伝っていたかもしれない。

即興で描いたものがそのまま最終形態になったので、曲の成り立ちと似ていて気に入った。

 

 

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