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大砂漠

 

だいさばく?おおさばく?

おおさばくの方がなんか好き。

タイトル通り『砂漠』のフレーズが再登場する。

アップテンポに変わって、打ち上げのような、お祭りのような、不思議な騒がしさが楽しい。

 

バーーーーーイラーーーースーーーーーー

バーーーーーーーーーイヤーーーーーーース

バーーーーーイラーーーースーーーーーー

バーーーーーーーーーーーアウィーーーーーーーーーーー

 

歌詞など存在しない。

メチャクチャでっかく言ったら、子供でもどんな国の人でも歌えるだろう。

言葉は無いのに楽しそう、とか、みんな笑って歌うだろう、とか、ポジティブな情景が目に浮かぶ。

これが音楽の力・・・?と錯覚しそうだ。

 

1:40からのリズムが気持ちいい!

2:14からの低音メロディも格好いい。

そして、2:24<パンなき宴>という歌詞らしいワンフレーズ。

<パンなき宴>という言葉がまるで様々な言葉を持つ単語かのように、時にシャウトされる。

日本語歌詞やんけ!とツッコミは入れてしまうが、そもそも<パンなき宴>という一文を提示されて即座に意味を理解できる日本人は少なかろう。なのでセーフです。

筆者はあんまり理解してないです。(ザコ)

 

21曲目『開拓地』に向けての気持ち作りというか、関連性は感じる。

パンがなくても楽しそうな宴が催される『大砂漠』。

開拓者たちの腹を満たすのはパンだろうに、それが無くても楽しめるという心の豊かさの描写。と言ったら過言だろうか。

 

これは過言ではなく、『大砂漠』は『Wether Report』に限らず全楽曲の中で好きな曲上位に入っている。

エキゾチックなギター、パワフルなドラム、踊り出したくなるコーラス。

邦ロックの教科書からは逸脱しているから理解は得にくいかもしれないけれど、歌詞を覚えなくてもよくて、「アーー」と「ウィーー」が言えればどんな人でも合唱できる。とても魅力的な曲に思う。

 

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余談。

 

新譜『Camera Obscura』が発売する。

『螺旋をほどく話』のMVがあまりに良くて、ファンなら何回も何十回も聴いている事と想像に難くない。

どこを切り取ってもTシャツのプリントにふさわしいMVだと思う。

(この表現好きなんだけど改めて書くとちょっとバカにしているニュアンスもにじむだろうか?そんなつもりは無い。)

 

自分の好きなシーンのひとつは、メンバーがジャンプしている影が映るところ。

影なのに誰かきちんと分かる個性が出ていて、なんだかそこを切り取るセンスも良いなぁとほっこりしました。

 

新譜発売おめでとうございます。

待ってた。

 

youtu.be

 

youtu.be

 

脱皮後


『投擲』から再登場のメロディ。

疾走感があってロックだった『投擲』とは異なり、ミドルテンポにダウナー感が滲む。

こちらもとてもよい。

 

『脱皮中』からのノイズをバチンと切って、全く違う音楽が始まったのかと思った。いや、メロディは一緒なのだが。一瞬バグる。

ワルツのような3拍子に鳴るギターと、短いノイズを破裂させたような打音のリズムが心地よい。

まどろむ蛹(さなぎ)の内側に切れ込みが入って、覗く外の世界は朝日色。

『Wether Report』のジャケット写真を眺めながら聴くと、そんなイメージが沸き上がる。

現実と夢の境目の楽曲という感じがする。

 

<あしたはどこへ行こう>

<孤立無援のまま>

<それだけできみは腰抜けではない>

短い曲だが、この歌詞がとても好きだ。

力強い歌い方では決してない。

むしろ淡々としている。

だけど、色々な瞬間にこの歌詞をふと思い出して前へ進めた事が幾度かある。

ひとりきり(孤立無援)でどこかへ行くという選択をする事。

「それだけで腰抜けではない」と言ってくれる歌を知っている事は、自分の人生においてとても幸せな事だと思う。

 

<きみが乗る戦闘機のなか 花 敷き詰めて 贈るよ>

<はじめから抜け殻だったら もっと世界が好きになれたかな>

こちらもとても好き。

何故か切なさが漂う。

そんな事を考えた事は無かったけれど、言われてみれば非常にしっくり来る。

初めから抜け殻だったらもっと世界が好きになれたかな。

そんな事を考えた事は無かったけれど、言われてみれば「分かる」と思ってしまう。

初めから空洞だった者と、詰まっていた物を失くして空洞を得た者。

『脱皮後』。

 

そんな切なさを感じながら、<それだけできみは腰抜けではない>と再び歌う。

それはもはや応援歌に聴こえる。

 

『船』で『大陸』を離れたらどこへ行くんだろう?と思考した。

まだ、まだどこにも辿り着いていない。

まどろむ蛹から体を剥がして、あたたかい細胞液を乾かして。

抜け殻にはなれなかった己を自覚して、脱皮後の生身でしか辿り着けない所へ、歩き出した。

 

youtu.be

脱皮中


ノイズ交じり ぶつぶつ 途切れるららら。

予兆の表現として『脱皮中』という言葉は、生々しさが伴う。
感覚的に何かが変わるのではなく、身体的な変化、フィジカルな転向。
だから予測がつかない。
何が起こるか分からない。
『脱皮後』に見る世界では。

 

 

 

youtu.be

 

夜の海は波の形が見えない。

"海"という巨大な塊がうごめく。

だから夜の海は少し怖い。

 

得体の知れない水塊を描くように、音が、波打つ。

 

<夜は黒い 夜は深い 放送はこれでおしまい>

この歌詞を聴くと、アルバムの終わりが近いんだなと寂しくなる。

『Wether Report』には、放送を想起させる単語が登場する曲がいくつかあった。

『投擲』―カメラ 放送席

『塔(エンパイアステートメント)』―エンパイアステートビルそのものが電波塔だ。

『真夜中』―今日の放送は終了したと そっけない画面のテロップ

『新聞』―おびただしいアンテナ、それは衛星のようなかたちをしている、それは電波のようなかたちをしている

『大陸』側には、きっとそれらがあったのだろう。

黒い波に揺られて、行き先不明瞭の沖へ出航していく。いや、もしかしたら漂流していく。遭難していく。

 

~0:41 第一波

ギター、マラカス(?)

最初はギターのカッティングだと思ったが、マラカスを強めに振って出る音かな~と思う。(ジャッ!!ってやつ)

ギターの表現力がエグくて、右へ左へ揺れる波と、マラカス(?)音は弾ける白波に聴こえる。

 

~1:15 第二波

ギター、マラカス、キーボード、ギロ(?)

楽器+2だと思う。

波の表現にキーボードが加わり、第一波の時よりも沖に近づき大きな波に変わった。

「ギーッ」というノイズのような、遠くから聴こえる波のような音はギロではなかろうか?

(打楽器は詳しくないので、ギロみたいな違う楽器かもしれない。)

 

~1:35 第三波

ギター、ギロ、犬の遠吠え

少し波が荒くなる。

<石炭の臭いで犬が乾く>

<霧のむこうでラッパが鳴り響くのさ>

SEがラッパではなく、犬の遠吠えなのがシュールでPeopleらしい。

 

~1:57 第四波

ギター、ギロ、キーボード

 

~2:14(ラスト) 第五…波?

ギロか、砂をサーッてやる楽器(調べたら「オーシャンドラム」という楽器があるらしいです)、ペットボトルのキャップ?を落とす環境音。

第四波で船は遠い沖に出てしまったように思う。

その後ろ姿を見送り、最後はどこにいるんだろう。

波の音はもうせず、砂浜に立っていると言うには乾きすぎている。

最後の落下音が妙に現実的だから、船で沖へ出る夢でも見ていたのかなと解釈する。

砂の音は、夢がさらさらと崩れていく音。

目覚めたら、どこへ行けばいいんだろう。

 

『大陸』を出航した『船』だが、もしかしたら『大陸』までの曲は全て夢だったのかもしれない。

夢と現実の境目に『脱皮中』。

『脱皮後』に見る世界を現実だと仮定して、用意が出来たら歩き始めなきゃ。

終着点の21曲目にあるものを、求めて。

 

youtu.be

 

 

大陸

 

北海道ではッッッ!

 

アイヤ~~~~~エ~~~イヤヤ~~~~~

アイヤ~~~~~エ~~~イアヤ~~~~~

 

初めて聴いた時は普通に爆笑しました。

「何じゃこりゃ!?」ってなるわ。

すごくカッコイイ曲や芸術的な曲を作れるのに、ふざける人々。とてもよいですね。

 

バックで気象予報のような物を唱え続けるのは、エンジニアの井上うにさん。(メンバーじゃ、ない!)

いやーー有名な話ではありますが、だいぶ長らくダイゴマンだと思ってましたねーー。声似てない?

この、やたら力強いというか・・・何でこんな所に力込めてんだ・・・?っていう読み上げと、ラストの「北海道ではッッッ!!」が勢い良すぎてマジで好き。

 

one-tongue.net

 

ライブでやってたんだなぁ。てかダイゴマンナイトかぁ。てか行ったわ。

 

間髪入れずに山口が【大陸】につなげると、波多野と福井も揃って太鼓を叩くという3人態勢のリズム合戦。ユニゾン、ソロ回しなどで魅了し、ダイゴマンお面をつけながら太鼓を叩く波多野の姿が民族音楽感を増幅させていた。                          ――引用

 

狂気かよ。

改めて状況を思い出すとヤバイですね。笑

 

短い曲ですが、Peopleらしさ(おふざけのすがた)が詰まってて好きな曲です。

さて、早いものでWether Reportも残り6曲となりました。

ここから先はシリアスな曲が続く予報となっております。

音を楽しむと書いて音楽、その気持ちを忘れないよう、1曲ごとに『大陸』に戻って来ようと思います。(嘘)

 

youtu.be

 

Youtubeだと最後が途切れちゃって勿体ない!

 

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絵の小ネタ。

グッズのカーディガンとTシャツを着用しております。

 

 

 

 

新聞

 

<円の中心に立って雨を待ち望とき 人は守られている 空想の卵のなか>

規則的なギターの和音と、規則的なドラムのハイハット

正確な音の粒に耳を慣らす。

新聞に印字された文章の正確な羅列を想起する。

 

繰り返すリズムパターンと、歌と語りの中間のような発声、それとサビ(?)のような物が用意されている曲構成は、HIP-HOPとかラップに近いと思った。

でもラップと言うには自由文律で、韻は関係なさそうだ。

詩の朗読をアートで表現する方法を、ポエトリーリーディングと呼ぶらしい。

ならば『新聞』はそうだろう。

 

<ラジオが放送されている 息も絶え絶えに>

<原音を忠実に再生していると誰もが口をそろえて>

<雑音に満ちた数世紀をまたぐ>

<名前が足りない>

<名前が見つからない戦争があって>

チッチッチッチと打たれる正確なドラムに乗っかって、言葉が水のように浸透してくる。

濁流という程圧倒的ではないが、流れは決して止まらないから、清流と言ったら伝わるだろうか?

(それはある意味読経にも似ていて、落ち着く。)

 

<言葉がだぶつく>

<言葉があり余る>

『新聞』で一番好きな歌詞。

言葉で満ちている、新聞という物体に対する皮肉だよ。

いや、新聞は何も悪くないのだが。

隙間を埋めるために人間が印字した言葉は、時にだぶつき、時にあり余る。

もしかしたら、そのだぶついた言葉が他の人間―誰かを、傷つける結果になるかもしれないのに。

新聞屋は、新聞の隙間を埋めていく。

 

曲中03:38から差し込まれるノイズに、周波数の合わないラジオのようなもどかしさを感じる。(伝わらない事を承知で、あえて。)

<Girl is dead.新聞紙はそう言った>

繰り返すのは、少女の死はいつでもニュースになるという皮肉・・・は深読みしすぎだろうか。

それぞれの国、それぞれの時代、それぞれ違う少女がニュースになるけれど、見出しはいつでもGirl is dead.

ひとりの死が薄められ、見知らぬ人の死を「かわいそう」だなんてのたまう読者の感想は「雑音」。

・・・は深読みしすぎだろうか。

 

それにしたって、突然ぶった切って次曲『大陸』を突然始めるセンス。

余韻?知らねぇなぁと新聞紙を破り捨ててそうな所に感じていいのは、漢気なのか意地悪さなのか。

どちらにせよ、我々は乗っかっていく。

破られた新聞紙が風に煽られて、海を越えて、辿り着いた『大陸』で。

次の風景を見に行きたい。

 

youtu.be

潜水

 

助走をつけるようなギターのイントロ、

待って待って。

やがて一気に、海へとダイブ。

青い世界で、見えるのは気泡と音と。

そういや、音は見えない波なんだっけ。

Tr.13『潜水』。

 

よくもまあ、こんな海ん中をイメージできる音を作れるもんだと思う。

水圧の抵抗感とか、波に揉まれる感じとか、大きな力に全身が包まれてたゆたう感覚とか。

そしてどうしようもなく、音が良い。

サビに入る前の"ぐいんっ"と引き込むグルーヴ感。

<どんな色をしているの?どんな味がするんだ?人がいつか飛び込む海の底はさあ>

疾走感溢れるサビは揺れて楽しむ。

イントロのギターはメインメロディっぽいけど、それを支えるドラム・ベースがぐいんぐいんと音楽を引っ張っていく。

 

緩急が極端。

<もう おやすみ>という歌詞とともに、ミドルテンポに戻る。

1度目はすっと入ったドラムも、2度目はエネルギッシュさを増して、躍動感が上がる。

叩かれる鼓音に合わせて体を揺らすのが楽しい。

 

<どんな色をしているの?どんな味がするんだ?人がいつか飛び込む海の底はさあ>

2度目のサビを終えたら、<優しい人をさがすのはやめたよ 飛び込む海はきみのもの>とラスサビの前の最後の助走。

エネルギーを放出するような、エネルギッシュな演奏が気持ちいい。

3分17秒と他の曲と比べて短いが、ロックゆえに十分だ。

後奏、荒波に飛び込んだようなセッションが格好いい。

ライブでよく演奏される印象だが、なるほど、3楽器の格好よさがよく見える曲だからかもしれない。

 

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<人がいつか飛び込む海の底>という歌詞に、そこはかとない終末観・爽やかな絶望感を感じる。

人は、いつか、海に飛び込んで終わる。

その前提の上、爽やかな音楽にこういう歌詞が乗っている事に心をくすぐられる。

そして、最後に<飛び込む海はきみのもの>と、人(全体)からきみ(個)へ視点がミニマムになっていく。

<きみのもの>と言われた直後に、ダイブ感のあるラスサビが来るのでアドレナリンの海に頭を突っ込まれた気分です。

 

Things Discovered 巻末インタビューにて

 「ネタが不完全な状態でも、とりあえず作る」(山口)

 「綺麗に整えたくなかったんですよね。都市開発するんじゃなくて、開発されてないスラム街も残してジオラマにするみたいな」(波多野)

というやり取りがあったが、『潜水』はおそらく完全な状態だし、都市開発されてる方の曲。笑

People In The Boxには海が登場する曲が他にもありますが、その中でも『潜水』はノリやすくて、格好良くて、ロックだと思う。

 

youtu.be